不動産登記法
不動産登記の基本
不動産登記の基本的な仕組み
・不動産登記簿という帳簿上で行われる
・不動産登記簿には、一筆の土地、一個の建物ごとに登記記録が作成される
※日本では土地と建物は原則的に別の不動産
登記記録
・表題部
・権利部
・甲区
・乙区
表示に関する登記、権利に関する登記
・表示に関する登記:表題部になされる登記
・権利に関する登記:権利部になされる登記
違い
・表示に関する登記:申請義務あり、対抗力なし
・権利に関する登記:申請義務なし、対抗力あり
登記名義人、表題部所有者
・登記名義人:権利部の権利者
・表題部所有者:所有権の登記がないときの表題部の所有者
申請主義
原則
登記官は登記を、当事者の申請・官公署の嘱託がなければすることができない
例外
表示に関する登記は、登記官が職権ですることができる(申請がなくても)
代理権の不消滅
登記に関する代理権は、本人が死亡しても消滅しない
本人:登記を代理人に依頼したあと、死んでしまった
↓
本人死亡後に代理人がした登記は有効
マンション
マンションの登記は特殊
マンションの登記は特殊
・一物一権主義(一つの物には一つだけの権利)の例外
・登記が「一棟の建物」「区分建物」に分かれている
(「区分建物」の登記は一室ごとに存在する)
・土地の登記を敷地権という処理をして、建物と土地の登記がワンパックになっている
※小規模なマンションなど、敷地権の登記をしていないマンションもある
「一棟の建物」
=マンション全体
「区分建物」
=専有部分の建物=専有建物=専有部分=一室
マンションの登記記録
・土地(=敷地)
・表題部
・権利部
・一棟の建物(=マンション全体)
・表題部
・区分建物(=専有部分)
・表題部
・権利部
マンションの表題登記
マンションが新築された場合の表題登記は、すべての区分建物(=専有部分)の表題登記と合わせて申請しなければならない
(分譲事業者が、分譲前に行うのが一般的)
専有部分の所有権保存登記
区分建物(=専有部分)は、表題部所有者から所有権を購入した者は、所有権保存登記を申請できる
敷地権付きの区分建物であるときは、敷地権の登記名義人の承諾を得なければならない
敷地権の登記
・「一棟の建物」の表題部に、「敷地権の目的である土地」の表題部が追加される
・「区分建物」(=専有部分)の表題部★に、「敷地権」の表題部が追加される。敷地権の割合も記される
・「土地」の権利部には、「所有権敷地権」と登記官が職権で登記した後、記録が停止。以降、土地の登記は「区分建物」(=専有部分)の方で処理する
「所有権敷地権」
・所有権が敷地利用権なので所有権敷地権と土地の権利部に記載される
・所有権の一種と考えていいと思われる
分かりやすく言えば、一室ごとに敷地権が登記されるということ
◇登記する場所の整理
・「一棟の建物」表題部
・「区分建物」表題部
・「土地」権利部
規約共用部分
規約共用部分である旨の登記は、規約共用部分とされる「区分建物」(=専有部分)の表題部になされる
表示に関する登記
表題登記とは
表題部に最初になされる登記
(人の出生届に相当するもの)
表題登記の申請義務
所有権取得の日から1ヵ月以内に表題登記を申請しなければならない
・土地:新たに生じた土地、または表題登記のない土地を取得した者
・建物:新築した建物、または表題登記のない建物を取得した者
土地の分筆登記・合筆登記
分筆登記・合筆登記できる者
・所有権の登記名義人、または表題部所有者
合筆登記できない土地
・接続してない
・地目・地番地区が異なる
・所有者が異なる
・所有者の持分が異なる
・所有権の登記がある土地と、ない土地
・所有権以外の権利の登記がある
※↑できないのは合筆
変更登記
土地
・地目、地積に変更があったとき
建物
・建物の種類、構造、床面積、名称等に変更があったとき
申請する者
・所有権の登記名義人、または表題部所有者
期間
・変更日から1ヵ月以内に変更登記を申請しなければならない
◇
表題部所有者の氏名・住所の変更登記は義務ではない★
これらを変更登記するなら、表題部所有者以外の者は申請できない
滅失登記
滅失したときは、滅失の日から1ヵ月以内に滅失登記を申請しなければならない
申請する者
・所有権の登記名義人、または表題部所有者
権利に関する登記
登記することができる権利
1.所有権★
所有権敷地権も★
2.地上権★
3.永小作権
4.地役権★
5.先取特権
6.質権
7.抵当権★
8.賃借権★
9.配偶者居住権★
10.採石権
登記できない
・配偶者短期居住権
借地権は、賃借権(土地)と地上権の総称なので、もちろん登記できるということになる
権利部は申請義務なし
登記をしなければ第三者に対抗できない
↓
登記をしなくて損するのは権利者自身
↓
わざわざ義務づけなくても当然自発的に申請するだろう
甲区、乙区
・権利部
・甲区
・乙区
・甲区:所有権
・乙区:所有権以外の権利
登記の先後(順番)
順位番号で先後を判断
別区になされた登記は、受付番号で先後を判断する
所有権保存登記とは
初めてなされる所有権の登記
所有権保存登記がなされないと、他の権利の登記は一切できない
単に「保存登記」とも
所有権保存登記を申請できる者
・表題部所有者
・表題部所有者の相続人その他の一般承継人
・所有権があると確定判決が出た
・収用によって所有権を得た
特定承継人(表題部所有者から買った者)は申請できない★
ただし、区分建物(マンションの一室)を表題部所有者から買った者は申請できる
◇敷地権付き区分建物
敷地権付き区分建物を表題部所有者から買った者は、所有権保存登記を申請できるが、敷地権の登記名義人の承諾を得る必要がある
◇
表題部所有者が申請するのが基本
表題部所有者が、所有権保存登記をしないまま死んでしまった
→表題部所有者の相続人その他の一般承継人が所有権保存登記
表題部所有者AからBが不動産を買ったが、所有権保存登記をしないままAが死んでしまった
→特定承継人であるBは、所有権保存登記をできない
→Aの相続人その他の一般承継人に所有権保存登記をしてもらった上で、Bは移転登記をする
一般承継人/特定承継人
・一般承継人:相続や合併のように、他人の権利義務を一括して引き継ぐこと(「包括承継人」とも)
・特定承継人:売買のように、特定の権利のみ引き継ぐこと
移転登記
権利が他の者に移転した旨の登記
※住所の移転ではない
変更登記と移転登記の違い
変更登記
・表題部の変更
・権利部の権利に関しない変更
移転登記
・権利部の権利に関する変更
登記権利者/登記義務者
・登記権利者:買う者
・登記義務者:売る者
仮登記:順位保全の効力
仮登記に基づいて本登記を行うと、その本登記は仮登記の順位でなされたとして扱われる
仮登記の申請
原則
仮登記権利者と仮登記義務者が共同で申請する(共同申請主義)
例外:仮登記権利者が単独で申請できる
・仮登記義務者の承諾があるとき
・仮登記を命ずる処分があったとき
仮登記を本登記にあらためる条件
所有権の仮登記に基づく本登記(仮登記を本登記にあらためる)は、登記上の利害関係を有する第三者の承諾があるときに限り申請できる
仮登記の抹消
原則は共同申請主義
例外
・仮登記の登記名義人は、単独で仮登記の抹消を申請できる
・仮登記の登記名義人の承諾があれば、利害関係人も単独で仮登記の抹消を申請できる
共同申請主義
原則
権利に関する登記の申請は、登記権利者と登記義務者が共同でしなければならない
例外(単独での申請が可能)
1.確定判決による登記
例:登記義務者が協力してくれないので裁判した
2.相続・合併による権利移転の登記
3.登記名義人の氏名・住所等の変更登記・更生登記
例:結婚で姓が変わった
4.所有権保存登記
(1発目なので)
5.仮登記義務者の承諾があったときの仮登記
6.仮登記を命ずる処分
7.仮登記の抹消
8.収用による所有権移転の登記
例:国が公共事業のため一般人の土地を強制的に取り上げた
注意
承諾を得ることと、共同申請は、まったく別のこと
登記事項証明書
登記事項証明書の交付
何人も、登記所の登記官に対して、手数料を納付して、登記事項証明書の交付を請求できる
不動産の所在地の登記所でなくていい
◇
土地所在図、地積測量図、地役権図面、建物図面及び各階平面図を除く登記簿の附属書類の閲覧の請求は、請求人が利害関係を有する部分に限り、することができる
不動産登記法まとめ
表題部/権利部
登記の呼び方
・表題部:表示に関する登記
・権利部:権利に関する登記
最初の登記
・表題部:表題登記
・権利部:所有権保存登記
申請義務
・表題部:あり
・権利部:なし
対抗力
・表題部:なし
・権利部:あり
手続き
・表題部:単独
・権利部:原則として共同。例外で単独も
権利部だけの事柄
・移転登記
・共同申請主義
・仮登記