借地借家法(借地)
借地借家法(借地)の適用
建物所有を目的とした土地の賃借権・地上権
※土地の賃借権でも、建物所有を目的としていなければ借地借家法は適用されず、民法の賃貸借が適用される
借地権とは
・建物所有を目的として他人の土地を使用する権利
・賃借権(土地)と地上権の総称
賃借権と地上権の違い
流通している借地権のほとんどは賃借権で、地上権はあまりない
権利
・賃借権:債権(人に対する権利)
・地上権:物権(物に対する権利)
登記
・賃借権:通常はされない
・地上権:地主に登記義務があり、登記される
譲渡
・賃借権:地主の承諾が必要
・地上権:地主の承諾は不要
地代
・賃借権:かかる
・地上権:かかる場合が多い
抵当権
・賃借権:土地の賃借権には設定できない(建物にはできる)
・地上権:設定できる
借地契約とは
借地に該当する賃貸借契約
借地契約における2者
・借地権設定者:土地を貸す者
・借地権者:土地を借りる者
無効となる特約
借地借家法に違反し、借地権者に不利な特約は、無効になる
存続期間
借地権の存続期間
原則:30年
※
・30年より短い期間を定めても無効であり、30年となる
・30年より長い期間を定めたら、それが存続期間となる
↓
期間の定めがない借地契約は存在しない(民法・借家と異なる)
期間を定めなければ強制的に30年契約となる
↓
要するに、最低でも30年ということ
考え方
木造建築の寿命に合わせて30年としている
借地契約の終了と更新
終了
存続期間が満了すると、原則として、借地契約は終了する
更新
1.合意更新
・当事者の合意で更新
・建物はなくてもいい
合意がなくても、建物がまだ存在する場合
2.請求更新
3.法定更新(使用継続による更新)
により、従前と同じ条件で更新したものとみなされる
2.請求更新
・存続期間が満了する場合、借地権者が更新を請求したとき
(一方的に借地権者が請求しただけで更新が成立しちゃう!!)
3.法定更新(使用継続による更新)
・存続期間が満了後、借地権者が土地の使用を継続するとき
注意
2も3も借地上に建物が存在する場合に限られる
更新後の期間
最初の更新:20年
2度目以降の更新:10年
↓
30年→20年→10年→10年→10年…
最低30年→最低20年→最低10年→最低10年→最低10年…
試験対策
「最初の更新」は最初の契約(30年~)ではない! 20年~になる更新のこと!
借地権設定者による更新阻止
存続期間が満了後、借地権者が土地の使用を継続している場合でも、借地権設定者が遅滞なく正当事由ある異議を述べると、更新は阻止される
正当事由の判断材料
・立退料を払うかどうか
※立退料を払えばすなわち正当事由が成立する、というわけではない。あくまで判断材料の1つ
満了して更新がないとき
満了して更新がないとき、借地権者には借地権設定者に対して建物買取請求権がある
対抗力
土地が売却された場合の対抗
・借地権設定者:土地を貸してる
・借地権者:借りた土地に建物を所有
↓
・借地権設定者:土地を売ってしまった
・借地権者:借りた土地に建物を所有
・土地の新所有者:土地を買った
借地権者は、土地の賃借権の登記がなくても、建物の登記をしていれば借地権を第三者(土地の新所有者)に対抗できる
建物の登記の要件
・自身の名義
×家族名義
・表示に関する登記でもよい
・同一性が認識できる登記であればよい(軽微な相違は問題ない)
◇転借人
賃借人が対抗力を備えていれば、転借人(賃借人から転借した)もそれを援用して第三者に対抗できる
掲示
借地上の登記された建物が滅失しても、借地権者が借地上に掲示すれば、滅失の日から2年間、借地権を第三者に対抗できる
考え方
建物が滅失したら、1ヵ月以内に滅失登記しなければならない
そうなると、建物の登記を失ってしまう
そのための救済措置
2年間は、再築のための期間
借地権の譲渡・転貸
借地権の譲渡・転貸
◇基本的な考え方
借地権者が土地の賃借権を第三者に譲渡・転貸する場合には、借地権設定者の承諾が必要
・建物を第三者に売却・競売するときも、おのずと賃借権も第三者に譲渡することになるので、賃借権の譲渡について借地権設定者の承諾が必要
・地上権は不要
◇借地権者が建物を売却するケース
建物を第三者に売却するとき、おのずと賃借権も第三者に譲渡することになるので、賃借権の譲渡について借地権設定者の承諾が必要
↓
借地権設定者が賃借権の譲渡を(借地権設定者に不利にならないのに)承諾しないとき、借地権者は裁判所に許可を申し立てることができる
↓
裁判所の許可を得れば、第三者(購入者)は賃借権の取得を借地権設定者に対抗できる
なお、承諾も許可も得られなかった場合、第三者(購入者)には借地権設定者に対して建物買取請求権がある
↓
つまり、借地権設定者には承諾か買取かの2択しかない
◇第三者が建物を競売で取得したケース
第三者が建物を競売で取得したとき、おのずと賃借権も第三者(競落人)が取得することになるので、賃借権の取得について第三者(競落人)は借地権設定者の承諾が必要
↓
借地権設定者が賃借権の譲渡を(借地権設定者に不利にならないのに)承諾しないとき、第三者(競落人)は裁判所に許可を申し立てることができる
(裁判所に申し立てることができるのは、建物の代金を支払ってから2ヵ月以内)
↓
裁判所の許可を得れば、第三者(競落人)は賃借権の取得を借地権設定者に対抗できる
なお、承諾も許可も得られなかった場合、第三者(競落人)には借地権設定者に対して建物買取請求権がある
↓
つまり、借地権設定者には承諾か買取かの2択しかない
◇売却と競売の比較
借地権設定者から承諾を得る者
・売却:借地権者
・競売:第三者(競落人)
裁判所に許可を申し立てる者
・売却:借地権者
・競売:第三者(競落人)
建物買取請求権がある者
・売却:第三者(購入者)
・競売:第三者(競落人)
覚え方
競売はすべて第三者(競落人)。売買は建物買取請求権だけ第三者(購入者)
建物買取請求権
建物買取請求権を行使できる場面
借地権者が借地権設定者に建物を時価で買い取るよう請求できる場面(建物買取請求権)
1.借地権の存続期間が満了して更新がないとき
※借地権者の債務不履行により契約が解除された場合は、建物買取請求権を行使できない
2.第三者が購入・競売により取得したが、借地権設定者の承諾も裁判の許可も得られなかったとき
1も2も
請求した時点で、建物の所有権は借地権設定者に移転する
1の建物買取請求の場合
・借地権設定者の代金支払い債務と、借地権者が建物を引き渡す債務は、同時履行の関係になる
2の建物買取請求の場合
・借地権設定者の代金支払い債務と、第三者(建物の新所有者)が建物を引き渡す債務は、同時履行の関係になる
↓
借地権設定者が代金を支払うまで、建物を引き渡さなくていい
変更
地代等増減請求権
・借家と同じ
・借家と同じく、一定期間借賃を減額しない特約は無効
建物の再築
建物の滅失と再築
最初の契約期間(30年~)に滅失した場合
・残存期間を超えて存続する建物を、借地権設定者の承諾を得て再築した場合、借地権は、承諾日と再築日の早い方から20年存続する(延長する)
・残存期間を超えて存続する建物を、借地権設定者に無断で建てても、借地権設定者から解約されない
更新後(20年~、10年~)に滅失した場合
・残存期間を超えて存続する建物を、借地権設定者の承諾を得て再築した場合、借地権は、承諾日と再築日の早い方から20年存続する(延長する)
・残存期間を超えて存続する建物を、借地権設定者に無断で建てたら、借地権設定者は解約を申し入れることができる
→解約の申し入れから3ヵ月で借地権が消滅する
・要するに、承諾がなければ再築はできない。もし承諾を得ずに建ててしまったら解約される
・最初の契約期間(30年~)と異なることに注意
・借地権者が裁判所に許可を申し立てることはできる。裁判所の許可を得れば再築できる
◇まとめ
30年~
・承諾ありの再築:20年延長
・承諾なしの再築:解約はされない
20年~、10年~
・承諾ありの再築:20年延長
・承諾なしの再築:解約できる
定期借地権
定期借地権3種
・一般定期借地権
・事業用定期借地権
・建物譲渡特約付借地権
一般定期借地権
・50年以上
・更新がない(更新という概念がない)
・再築による延長はない
・建物買取請求権はない(土地を更地で返してもらえる)
・更新がない等の特約を公正証書等の書面によって行わなければならない
※かならずしも公正証書でなくてもよい。とにかく書面が必要
事業用定期借地権
・事業用(居住用は対象外)
・短期:10年以上、30年未満
・長期:30年以上、50年未満
・更新がない(更新という概念がない)
・再築による延長はない
・建物買取請求権はない(土地を更地で返してもらえる)
・契約を公正証書で行うことが必要
※ぜったい公正証書★
建物譲渡特約付借地権
・30年以上
・契約期間経過後、借地権設定者が建物を買取る(したがって借地権設定者が借地権も取得し、借地権は消滅する)
・特約は書面の必要なし(口頭でいい)
考え方
借地権設定者に不利な特約(建物を買取る)が付いてるので、一般定期借地権(50年以上)より短い期間(30年以上)でよい
民法と借地借家法のまとめ
賃貸借期間
・民法
・期間の定めがある:~50年、~50年
・期間の定めがない:(~50年)
・借家
・期間の定めがある:1年~
・期間の定めがない:∞
・借地
・期間の定めがある:30年~、20年~、10年~、10年~
ポイント
・民法「以下」、借地借家「以上」
・民法の期間の定めがない契約は、存続期間は50年までだが、強制的に50年契約になるというわけではない
・借地に、期間の定めがない賃貸借契約は存在しない
・借地借家で、強制的に短縮されることはない
・借家で1年未満で契約したら、期間の定めがない賃貸借契約になる
一方的な解約
一方的な解約は、「期間の定めがない賃貸借契約」でしかできない(民法、借家)
・借地には「期間の定めがない賃貸借契約」が無いので、一方的な解約はできない
・借家で賃貸人が一方的に解約するには正当事由が必要
・定期建物賃貸借では例外的に、賃借人が一方的に解約できる(居住用で200m2未満に限る)