債務不履行
債務不履行の全体像
契約してない
・売主に責任あり:不法行為
引き渡し前
・売主に責任あり:債務不履行
・売主に責任なし:危険負担
引き渡し後
・売主に責任あり:契約不適合
・売主に責任なし:契約不適合
買主の対抗手段
・解除:契約後すべてで可能(債務不履行、危険負担、契約不適合)
・損害賠償請求(売主に責任ある場合のみ)
・追完請求(引き渡し後)
・代金減額請求(引き渡し後)
※試験対策上は↑上記の理解でよい。厳密に言えば、契約不適合は債務不履行の一種らしい。宅建レベルではそこまで考えなくていい
◇買主の対抗手段:ケース別
不法行為
・損害賠償請求
債務不履行
・解除
・損害賠償請求
危険負担
・解除
契約不適合
・解除
・損害賠償請求(売主に責任ある場合)
・追完請求
・代金減額請求
債務不履行
債務不履行
・履行不能(債務者に責任あり)
・履行遅滞
履行不能と責任
履行不能で
・債務者に責任あり→債務不履行
・債務者に責任なし→危険負担
※両者とも債権者は無催告解除できる
・債権者に責任あり→債権者は無催告解除できない
履行不能による債務不履行の成立要件
・履行が不可能
・債務者の責任による
不可抗力(天変地異など)なら債務不履行とならない(→危険負担)
履行遅滞による債務不履行の成立要件
・履行期を過ぎた
・債務者の責任による
・履行が可能
・履行しないことが違法
債務者が同時履行の抗弁権をもつ場合、履行期を過ぎても債務不履行とならない
※同時履行の抗弁権:契約者双方のうち片方が履行を提供するまで、もう片方は履行を拒める
金銭債務の特則
・履行不能はない(履行遅滞だけ)
・不可抗力を抗弁できない
・債権者は損害を証明する必要がない
債務不履行されたときに債権者がとれる手段
・解除
・損害賠償請求
※危険負担には損害賠償請求できない
危険負担
債務者に責任がないけど債務不履行になった場合、債権者は債務の履行を拒絶できる。解除もできる
(例:関東大震災で燃えた)
危険負担の要件
・契約後、引き渡し前
・双方に責任がない
・履行不能
契約不適合
契約不適合責任とは
契約違反はやり直せ!
イヤなら値引きしろ!
契約書が重要
買主が事前に知っていても、契約書に告知していなかったら契約不適合責任の対象となる
例
内見のとき壁紙が破れてるのに気づいた(買主は事前に知った)。契約して引き渡されたら壁紙が破れたまま。契約書には「壁紙が破れてるけど直しません」とは書かれていない。売主は責任を負う
契約不適合
・種類・品質が契約不適合
・数量・権利が契約不適合
◇例
品質
・契約にはない欠陥があった
数量
・面積が契約より小さかった
権利
・土地の一部が売主のものではなく、買主がその部分を取得できなかった
・土地に第三者の賃借権が設定されていて、買主が思うように土地を使えない
責任追及期間
種類・品質が契約不適合
→買主は契約不適合を知ってから1年以内に売主に通知しなければならない
数量・権利が契約不適合
→期間制限なし。消滅時効が成立するまでは買主は責任追及できる
・主観的起算点:買主が権利を行使できることを知った時から5年
・客観的起算点:権利を行使できた時から10年
◇例外
売主が引き渡し時に不適合を知っていたら、通知は買主が知ってから1年を超えてもよい
◇期間制限
「1年以内に」は期間制限と呼ぶ。時効とは異なる
責任追及
・解除
・損害賠償請求(売主に責任ある場合)
・追完請求
・代金減額請求
知ってから1年以内に通知した場合
・解除
・損害賠償請求
・追完請求
・代金減額請求
上記は時効が成立するまで請求権がある
・主観的起算点:買主が権利を行使できることを知った時から5年
・客観的起算点:権利を行使できた時から10年
知ってから1年以内に通知しなかった場合
下記の権利はすべて消える
・解除
・損害賠償請求
・追完請求
・代金減額請求
契約不適合責任を負わない旨の特約
契約不適合責任を負わない旨の特約は有効
ただし、宅建業者が自ら売主となり、買主は宅建業者でない場合、契約不適合責任を負わない特約は無効になる
※
・35条では説明不要
・37条では、定めがあれば記載必要。定めがなければ記載不要
解除
解除3種
・催告による解除
・無催告解除
・手付解除
催告による解除の要件
・履行遅滞の場合、債権者は債務者に相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内に履行がないと解除できる
※債務者に責任のない履行遅滞でも債権者は解除できる
無催告解除の要件
次のいずれかの場合
1.履行不能
※債務者に責任のない履行不能(危険負担)でも債権者は解除できる
2.定期行為
例:クリスマスケーキをクリスマスに持ってこなかった
3.債務者が履行の拒絶を明確にしたとき
4.
5.
なお、債務不履行が債権者の責任のときは解除できない
解除の方法
・債務者に対する意思表示
※債務者の承諾は不要
・一度解除の意思表示をすると撤回できない
・全員から、または全員に対して
解除の効果
・契約は最初からなかったことになる
・原状回復義務
・同時履行
・現金:利息も付けて返す
・建物:賃料収入も返す
・契約を解除しても、損害賠償請求はできる
手付解除
手付とは
売買契約締結の際、買主から売主に渡す金銭等
いわゆる手付金
注意
「解約」「解除」は、契約の解除である
契約したあとの話
買受けの申込みの撤回は、手付は関係ないので注意
解約手付による解除
買主から解除する場合:買主は手付を放棄することで契約を解除できる
売主から解除する場合:売主は手付の倍額を渡すことで契約を解除できる
※解約手付による解除の場合、買主は手付放棄、売主は手付倍返しとなり、それ以上に損害賠償請求はできない
手付による解除の時期
相手方が履行に着手するまでの間に限られる
・例:買主が代金を持って売主のもとへ出発してしまうと、売主は手付による解除はできなくなる
・自分が履行に着手していても、相手が着手していなければ解除できる
債務不履行による解除の場合
手付は買主に戻る(原状回復義務)
損害賠償請求
損害賠償請求
売主に責任がある場合だけ、損害賠償請求できる
(追完請求・代金減額請求と異なる)
損害賠償請求できる範囲
・直す費用など
・履行利益(逸失利益)
損害賠償請求権の消滅時効の起算点
履行期(元の債権の履行を請求できる時)から進行する
※債務不履行の成立時(=損害賠償請求権の発生時)ではない
※損害賠償請求権は元の債権(引き渡し請求権)が転化したものであり、両者は同一の債権であるから
追完請求
契約に合うようにしてくれ
例
・お酒10本注文したのに9本しか持ってこなかった →あと1本持ってこい
・ビールを注文したのに日本酒を持ってきた →ビール持ってこい
考え方
ビジネスの場であたりまえに行なわれていること。いちいち損害賠償請求したり解除したりしたら大変すぎる
◇追完の履行
原則
買主の要求方法で売主は追完を履行する
例外
買主に負担でなければ、売主は異なる方法で追完を履行できる
◇売主の責任の有無は関係ない
売主に責任がなくても、買主は追完請求できる
◇買主に責任がある場合
買主に責任がある場合、追完請求できない
例
内見のときに買主自身が壁紙を破いた
代金減額請求
まけてくれ
原則
・追完請求するのが先。追完の期日まで履行しない場合、代金減額請求できる
例外:追完請求なしで代金減額請求できる場合
・追完するのが不可能な場合
・売主が追完を明確に拒絶した場合
・特定の期限までに履行されないと目的が達成されない場合
例:クリスマスまでにクリスマスケーキが届かなかった
・買主が催告しても売主が追完する見込がないとき
◇売主の責任の有無は関係ない
売主に責任がなくても、買主は代金減額請求できる
◇買主に責任がある場合
買主に責任がある場合、代金減額請求できない