建物区分所有法
建物区分所有法とは
マンションにおける権利関係を規律する法律
区分所有建物とは
マンション
区分建物とは
専有部分のこと
区分所有者/区分所有権
・区分所有者:専有部分の所有者
・区分所有権:区分所有者の専有部分の所有権
専有部分・共用部分
専有部分/共用部分
・専有面積:○○○号室
・共用部分:階段、エレベーター、廊下など
専有部分
○壁の内側線で囲まれた部分
×壁の中心線で囲まれた部分
専有部分を購入した者が得る権利
・区分所有権
・共用部分に対する権利
・敷地利用権
法定共用部分とは
建物区分所有法により共用部分としなければならない建物部分。建物の主要構造部分、廊下、階段室、玄関など
登記はできない
規約共用部分とは
管理規約によって共用部分とする建物部分。管理人事務室、集会室、駐車場など
規約共用部分として登記が必要であり、登記がなければ共用部分であることを第三者に対抗できない
共用部分の権利
区分所有者全員の共有となる
持分は、専有部分の床面積の割合による
↓
ただし、規約で変えられる
共用部分の管理
保存行為/管理行為/変更行為に分類される
(民法「共有」と同じ)
◇保存行為
単独で行える
(民法「共有」と同じ)
↓
ただし、規約で変えられる
◇管理行為
集会で、区分所有者および議決権の過半数が必要
(民法「共有」と同じ)
↓
ただし、規約で変えられる
◇変更行為
軽微変更
集会で、区分所有者および議決権の過半数が必要
↓
ただし、規約で変えられる
重大変更
集会で、区分所有者および議決権の3/4以上が必要
↓
ただし規約で、区分所有者を過半数まで引き下げることができる
〇過半数
×1/2以上
◇持分の処分
共用部分の持分を専有部分と切り離して処分することはできない
↓
・民法「共有」と異なる
・規約で一応変えられる(変える奴いるか?)
一部共用部分
一部共用部分とは
・1階~2階が商業施設のような場合における、1階と2階を結ぶエスカレーターなど
一部共用部分の規約
全体の規約(出題文「区分所有者全員の規約」)に定めることもできるし、利害関係者だけで設立した別組合の規約(出題文「共用すべき区分所有者の規約」)で定めることもできる
管理者は共用部分を所有できる
管理者は、規約を定めれば、共用部分を所有できる
敷地利用権
敷地利用権
所有権、地上権、賃借権のいずれか
敷地権とは
専有部分と一体化した(分離が認められていない)敷地利用権は登記をされることによって、敷地権と呼ばれる
規約によって分離処分が認められている場合、敷地権の登記はできない
◇背景
本来敷地利用権は敷地(土地)の登記記録に登記するべきだが、敷地利用権を敷地(土地)に登記すると分かりにくくなる
(敷地は1つなのに複数の敷地利用権者がいるので)
そこで、不動産登記法は、「専有部分と一体化した敷地利用権」を「敷地権」としてマンションの登記記録に登記できるようにした
◇敷地権の登記
・敷地権は、区分建物(=専有部分)の表題部★に登記する
・登記官は、土地(=敷地)の権利部の相当区に、職権で敷地権である旨を登記しなければならない
(敷地の登記記録にアクセスした人に、マンションの登記記録にアクセスするべきことを知らせる登記)
分離処分できない
敷地利用権を専有部分から分離して処分することはできない
↓
規約で一応変えられる(変える奴いるか?)
管理組合
かならず構成員になる
区分所有者は、かならず(自動的に)管理組合の構成員となる
管理者
管理者を置くことができる
(必須ではない)
管理者とは:
区分所有者の代表者
いわゆる「管理人」ではない
「理事」「理事長」などと呼ばれる
区分所有者以外の者でも可能 →部外者も可能
管理者の行為の効果は、区分所有者全員に帰属する
管理者の選任・解任
集会で、区分所有者・議決権の過半数の賛成で、選任・解任される
↓
規約で変えられる
過半数の賛成について
・区分所有者の過半数:人数の過半数
・議決権の過半数:専有面積の床面積の過半数
・区分所有者および議決権の過半数:「区分所有者の過半数」かつ「議決権の過半数」
義務違反者に対する措置:請求できる者
各区分所有者、または管理組合法人
◇法人でない管理組合
・請求の主体になれない
・裁判にするなら、便宜上、管理者または集会で指定された区分所有者が他の区分所有者全員のために訴訟提起ができる
集会
集会の召集
1.管理者がいる場合
・管理者が召集する
・管理者は、少なくとも毎年1回集会を召集しなければならない
・区分所有者および議決権1/5以上を有する者は、管理者に対し、会議の目的を示して集会の召集を請求できる(管理者があまりに怠慢だった場合に、管理者を解任するため)
↓
1/5という数字は規約で減らすことができる
2.管理者がいない場合
区分所有者・議決権1/5以上を有する者は、集会を召集できる
↓
ただし、1/5という数字は規約で減らすことができる
召集手続
集会の期日の少なくとも1週間前までに、会議の目的を示して、区分所有者全員に召集通知しなければならない
例外
・「1週間前までに」は規約で増減できる(伸ばすも縮めるも可)
・「区分所有者全員に」は、専有部分が複数人の共有の場合、議決権を行使する者にのみ通知すればよい
・規約に定めがあれば、見やすい場所での掲示でもよい
・区分所有者全員の同意があれば、召集手続を省略できる※下に詳細
・建替え決議の集会は、2ヵ月前までに招集通知しなければならない(規約で伸ばせる)
◇召集手続の省略
区分所有者全員の同意があれば、召集手続を省略できる
・小規模な分譲マンションのための制度
・区分所有者全員が集まっていれば、その場で集会をしたり、電話で連絡を取り合って即日集会をすることが可能ということ
・「招集通知で示された事項についてしか決議できない」の制限を受けない
・特別決議(3/4、4/5)も決議できちゃう
報告
管理者は、集会で、毎年1回一定の時期に、事務に関する報告をしなければならない
誰が議長か
管理者、または集会を招集した区分所有者の1人
↓
規約で一応変えられる
議決権行使
議決権行使:決議に参加して投票すること
共有者は、議決権を行使する者1人を定めなければならない
(区分所有者および議決権の双方の代表と思われる)
議決権は、書面または代理人によって行使をすることができる
◇占有者(=賃借人)
占有者(=賃借人)は議決権を持っていない
ただし、利害関係がある場合、集会に出席して意見を述べることはできる
決議
・規約で定めがない限り、招集通知で示された事項についてしか決議できない(省略した場合を除く)
・特別決議(3/4、4/5)は、規約がどうであろうと、招集通知で示されていなければ決議できない(省略した場合を除く)
・区部所有者全員の承諾があるときは、集会を開かずに、書面で決議をすることができる
特別決議 3/4
区分所有者および議決権の3/4以上
・共用部分の重大変更
・規約の設定・変更・廃止
・管理組合法人の設立・解散
・義務違反者に対する専有部分の使用禁止請求訴訟
・義務違反者に対する区分所有権の競売請求訴訟
・義務違反者(占有者)に対する引渡請求訴訟
・大規模滅失の場合の復旧
「共用部分の重大変更」は、区分所有者の賛成数は、規約で、過半数にまで減らせる(議決権は減らせない。3/4以上)
〇過半数
×1/2以上
特別決議 4/5
区分所有者および議決権の4/5以上
・建替え
決議の効力(規約の効力も同じ)
・集会での決議は、区分所有者全員に効力が及ぶ
特定承継人への効力
・集会の決議があった後に専有部分にを買った人にも、決議の効力は及ぶ(あたりまえ)
占有者への効力
・占有者(=賃借人)も、建物・敷地の使用について、決議によって区分所有者と同様の義務を負う(あたりまえ)
議事録
・集会の議事について、議長は書面またはデジタルで議事録を作成しなければならない
・議長と、出席した区分所有者の2人(合計3名)の署名押印が必要
合計3名
※議事録の保管・閲覧については、規約の保管・閲覧とまったく同じ
規約
規約の設定・変更・廃止
特別決議 3/4以上の賛成が必要
ただし、規約の設定・変更・廃止が、一部の区分所有者の権利に特別な影響を及ぼすときは、その者の承諾が必要であり、承諾を得られなければ、規約の設定・変更・廃止はできない
(例:1階で店舗をやっていたのに、規約の変更で店舗を禁止されそうなとき)
規約の保管・閲覧(議事録の保管・閲覧も同じ)
保管
・原則として管理者が保管する
・管理者がいない場合、区分所有者または代理人で、規約または決議で定める者が保管する
・管理組合法人の規約は、管理者が管理組合法人の事務所において保管しなければならない
閲覧
・利害関係人の請求があったときは、正当な理由がある場合を除いて、閲覧を拒んではいけない
保管場所の掲示
・規約の保管場所は、建物内の見やすい場所に掲示しなければならない
×通知すれば掲示しなくてよい
罰則
・保管義務、閲覧させる義務に反したとき、20万円以下の過料に処される
分譲事業者による規約の設定
分譲事業者(最初に専有部分を全部所有している)は、公正証書により、一定事項についてのみ規約を設定できる
分譲事業者が設定できる一定事項
・規約共有部分
・規約敷地
・専有部分と敷地利用権の分離処分について
・敷地利用権の持分割合
規約の効力
決議の効力と同じ
義務違反者に対する措置
行為の停止等の請求
例:ドンチャン騒ぎをやめるよう言う
誰でもできる
・集会の決議は不要
・ただし、訴訟を提起するなら、集会で過半数の賛成が必要
使用禁止の請求
例:ドンチャン騒ぎをやめないので、専有部分の使用禁止を請求する
訴訟を提起することが必要であり、集会で3/4以上の賛成が必要
区分所有権の競売の請求
例:使用禁止はあくまで一定期間にすぎない。それでもドンチャン騒ぎをやめないなら最後の手段。競売で区分所有権を売りとばして、ドンチャン騒ぎする奴をマンションから追い出す
訴訟を提起することが必要であり、集会で3/4以上の賛成が必要
占有者(=賃借人)に対する引渡し請求
例:ドンチャン騒ぎをしてるのが区分所有者なら「区分所有権の競売の請求」で追い出せるが、占有者(=賃借人)ならそうもいかない
占有者(=賃借人)に対して、賃貸借契約の解除と、専有部分の引き渡しを請求できる
訴訟を提起することが必要であり、集会で3/4以上の賛成が必要
復旧・建替え
復旧
小規模滅失
・建物の価格の1/2以下に相当する部分が滅失した場合、区分所有者は、単独で、滅失した共用部分と自分の専有部分を復旧することができる
・復旧費用は、他の区分所有者に対して、持分割合に応じて求償できる
・ただし、集会で復旧の決議(過半数の賛成)があれば、単独での復旧はできない
大規模滅失
・建物の価格の1/2を超える部分が滅失した場合、単独では復旧できない
・集会での復旧の特別決議(3/4以上の賛成)に基づいて、復旧を進める
・特別決議について規約を変えることはできない
・決議に賛成しなかった区分所有者は、決議から2週間を経過した日以降、賛成者に対し、区分所有権・敷地利用権を時価で買い取るよう請求することができる(多額の復旧費用は負担できないので、マンションから出ていきます!という人)
建替え
・集会で特別決議(4/5以上の賛成)が必要
・特別決議について規約を変えることはできない
・建替え決議がなされた場合、建替えに参加する区分所有者は、建替えに参加しない区分所有者に対して、区分所有権・敷地利用権を時価で売り渡すよう請求できる(建替えに反対する人が居座り続けて、工事の妨げになるおそれがあるため)
(ちなみに、必ず売り渡し請求をするらしい。なので買い取り請求の制度はない)
請求についての整理
・復:反対者が、賛成者に対し、買い取り請求
・建:賛成者が、反対者に対し、売り渡し請求