不動産物権変動
基本
不動産物権変動とは
不動産の権利を2人が争う問題
基本的な考え方
二者間契約はここでは関係ない
第三者が焦点になる
1.大原則
2.大原則にあたるもの
3.大原則にあたらない例外
大原則
不動産物権変動の大原則
本人に登記がなければ第三者に対抗できない
大原則にあたるもの
大原則にあたるもの = 本人に登記がなければ対抗できない第三者
・所有権を取得した者
・賃借人
所有権を取得した者
・本人より先に登記した者
・取り消し後の第三者
・解除後の第三者
・時効完成後の第三者
・相続人からの譲受人
・背徳的悪意者からの譲受人
本人より先に登記した者
・本人=買主 相手方=売主 第三者=買主
・買主同士は対等なので、登記が決め手となる
・第三者が買ったのが本人より後だったとしても
取り消しと登記
・取り消し前:「意思表示」参照
・取り消し後の第三者には登記がないと対抗できない
・強迫、詐欺/錯誤による取り消し
※
取り消し前の第三者:取り消し前に相手方から取得した第三者
取り消し後の第三者:取り消し後に相手方から取得した第三者
強迫と第三者
強迫を理由に取り消す前に第三者の手に渡っているなら、取り戻せる
強迫を理由に取り消した後に、手元に登記を戻さなかった時に、第三者が登記したら取り戻せない
強迫された場合、取り消し前の第三者に対抗できるが、
取り消し後の第三者に対抗するには対抗要件として登記が必要
なぜなら、取り消したのに、すぐに登記を自分に戻さず放置しておいた本人に責任があるから
この責任を「登記懈怠責任」という
解除と登記
・解除前の第三者に登記があれば対抗できない
・解除後の第三者には登記がなければ対抗できない
◇より詳しく
解除前
・本人に登記がなくて、第三者に登記があれば、対抗できない(→一見大原則通りだが)
・本人に登記がなくても、第三者にも登記がなければ、対抗できる(→つまり、大原則にあたらない例外となる)
解除後
・大原則通り。本人に登記がなければ第三者に対抗できない
時効と登記
・時効完成前の第三者には、時効完成後、登記がなくても対抗できる
・時効完成後の第三者には登記がなければ対抗できない
まとめ:取り消し/解除/時効と登記
前
・取り消し前:「意思表示」参照
・解除前の第三者に登記があれば対抗できない
・時効完成前の第三者には、時効完成後、登記がなくても対抗できる
後
・取り消し後/解除後/時効完成後:大原則通り。本人に登記がなければ第三者に対抗できない
例外
大原則にあたらない例外
大原則にあたらない例外 = 本人に登記がなくても対抗できる = 第三者に登記があっても本人は対抗できる
民法上「第三者」にあたらない第三者
・当事者
・売主の前主
・売主の相続人
・不法占拠者
・無権利者
・背徳的悪意者
・取り消し前・無効前の第三者で、取り消せる・無効にできる場合(意思表示 参照)
・時効完成前の第三者
・共同相続の持分
第三者に登記がない場合のみ
・解除前の登記がない第三者
◇
当事者
・相手方(第二者)=当事者
・相手方は第二者なので、第三者にあたらないのは当たり前
・二者間で契約が成立したら、本人に登記がなくても相手方に対抗できるということ
売主の前主
・本人=買主 相手方=売主 第三者=売主の前主
・買主が優先される
売主の相続人
・本人=買主 相手方=売主=被相続人 第三者=相続人
・相続人より買主が優先される
※ただし、相続人からの譲受人は第三者にあたるので、本人に登記がなければ対抗できない(買主と譲受人は対等なので、登記が決め手となる)
不法占拠者
・本人=買主 相手方=売主 第三者=不法占拠者
無権利者
・本人=買主 相手方=売主 第三者=無権利者
・無権利者の例:ニセの売買契約で売主から買ったが無効になった者(=ニセの買主)
・考え方:売主から直接買った買主の本人は優先される
※「意思表示」虚偽表示とはケースが異なる(第三者はニセの買主から買っているので)
背徳的悪意者
・本人=買主(相手方から買ったけど、登記を相手方のままにしていた)
相手方=売主
第三者=背徳的悪意者(本人に高く売りつけようとして、相手方から買って本人より先に登記)
・第三者の背徳的悪意者には、本人に登記がなくて対抗できる
・考え方:登記を本人に移していなかったのは本人の落ち度だが、背徳的悪意者は悪い奴なので、本人が優先される
※ただし、背徳的悪意者からの譲受人は第三者にあたるので、本人に登記がなければ対抗できない(買主と譲受人は対等なので、登記が決め手となる)
背徳的悪意者とは
信義に背く悪意者
単なる悪意者(知っている者)とは異なる悪質な者
例:本人に高く売りつけようとして、本人より先に登記した者
相続と登記
共同相続の持分は、登記がなくても第三者に対抗できる
※被相続人が第三者に不動産を売却した場合は除く