代理
基本
代理における3者
・本人
・代理人
・相手方
代理の基本
本人から代理権を与えられた代理人が、本人の代わりに契約すると、その効果が本人に帰属し、本人-相手方で契約が成立する
代理権が発生する場合
・任意代理
・法定代理
↓
・任意代理:本人の意思(代理権授与行為)に基づいて発生する
・法定代理:民法の規定に基づいて発生する
本人に効果帰属が起きる要件
・代理人が代理権を有している
・代理人が代理人として行為した
・代理人が代理権の範囲で行為した
代理行為
代理人が代理人として行為すること
原則
・代理人が、本人のためにすることを示した(顕名)契約のみ、本人に効果帰属する
・代理人が、顕名し忘れて相手方と契約した場合、代理人に効果帰属してしまう
例外:顕名しなかったのに本人に効果帰属
・相手方が、代理人が本人のためにすることを知っている場合、または知ることができた場合、本人に効果帰属する
◇顕名(けんめい)
代理人が本人のためにすることを示すこと
夫婦
夫婦はおのずと互いの代理になれる
制限行為能力者
制限行為能力者も代理人になれる
理由
・契約の効果は本人に帰属するため、制限行為能力者に不利益は及ばない
・本人が、あえて制限行為能力者を代理人にしたいというなら、禁止する理由もない
※ただし、代理人が後見開始の審判を受けたら、代理権は消滅する
◇取り消せるかどうか
原則
・代理人の制限行為能力を理由として、本人が代理行為を取り消すことはできない
例外
・制限行為能力者Aが制限行為能力者Bの法定代理人としてなした代理行為は、取り消すことができる
(ダブル制限行為能力者)
代理権の消滅
任意代理の消滅
・本人の死亡、破産
・代理人の死亡、破産、後見開始
法定代理の消滅
・本人の死亡
・代理人の死亡、破産、後見開始
考え方
子供が破産しても、親は親のまま
※後見開始:成年被後見人になったこと
※登記に関する代理権は、本人が死亡しても消滅しない
禁止される代理
・自己契約
・双方代理
・利益相反行為
↓
・自己契約:代理人が自ら契約相手となること
・双方代理:契約当事者双方の代理人として契約を成立させること
・利益相反行為:代理人には利益となるが本人には損失となる代理行為
◇例外
・本人の同意がある場合
・債務の履行(契約に基づいて双方の代理人として義務を果たす場合)
強迫・詐欺・錯誤
強迫・詐欺・錯誤は、原則として、代理人を基準として判断する
代理人が脅されたり騙されたり錯誤があれば、本人は契約を取り消すことができる
詐欺
・本人
・代理人:騙された
・相手方:騙した
↓
・本人:取り消せる
無権代理
無権代理とは
代理権のない者が勝手に代理人を名乗って契約を結んでしまった場合
無権代理における3者
・本人
・無権代理人
・相手方
無権代理の効果
原則
・本人に効果は帰属しない
例外:本人に効果が帰属する場合
・本人が追認した
・表権代理が成立する
◇なぜ本人は追認することがある?
売れるなら1000万円かなと本人が思ってた土地を、無権代理人が3000万円で売ることに成功しちゃった!
この場合、そりゃ本人は追認したいでしょ
無権代理の追認の方法
原則
・相手方に対して追認の意思表示を行う
↓
無権代理人に対して追認の意思表示を行っても、追認したことを相手方に対抗できない
例外
・無権代理人に対して追認の意思表示を行った場合で、相手方が追認があったことを知れば、追認したことを相手方に対抗できる
無権代理の追認の効果
契約時に「さかのぼり」で本人に効果帰属
無権代理人と契約してしまった相手方の保護
・無権代理人への責任追及
・本人への催告
・取り消し
◇無権代理人への責任追及
相手方は無権代理人に対して、履行または損害賠償を請求できる
責任追及の要件
・本人による追認がないこと
・相手方が善意・無過失であること
・無権代理人が制限行為能力者でないこと
※履行:契約を守ること
◇本人への催告
相手方は本人に対して、無権代理行為を追認するか否かを答えるよう、期間を定めて催促できる
↓
期間内に本人から返答がなければ、追認を拒絶したものとみなされる
◇取り消し
相手方は、無権代理人と締結した契約を取り消すことができる
取り消せる要件
・本人の追認がないこと
・相手方が善意であること
◇本人が追認した場合
本人が追認したら、契約はさかのぼりで有効になる
↓
追認によって有権代理となった以上、相手方は代理人へ責任追及することはできない
表権代理
表権代理とは
相手方が無権代理人を本物の代理人と信じて契約してしまったことについて、本人に責任がある場合、無権代理行為を本人に帰属させ、本人に責任をとらせる制度
表権代理3種
・代理権授与の表示による表見代理
・権限外の行為の表見代理
・代理権消滅後の表見代理
代理権授与の表示による表見代理
本人は無権代理人に代理権を与えていないのに、無権代理人に代理権を与えたという誤情報を相手方に伝えてしまった
↓
相手方は、無権代理人を本物の代理人だと信じて契約を締結してしまった
↓
相手方が、無権代理人が無権であることに善意無過失であれば、無権代理行為は本人に帰属する
権限外の行為の表見代理
例:本人は代理人に、土地を貸す権限の代理権を与えた。しかし代理人は、土地を売却する契約を締結してしまった
本人:土地を貸したい
代理人:土地を貸す権限しかないのに売ってしまった
相手方:土地を買ってしまった
この場合、代理人を十分に監督してなかった本人にも責任がある
↓
相手方が(権限外の行為であることに)善意無過失であれば、本人に効果帰属する
試験対策
出題文「代理人に権限があると信じたことについて、正当な理由がある」→善意無過失
代理権消滅後の表見代理
本人:土地を所有
代理人:土地を売る代理権を失ったのに、売ってしまった
相手方:土地を買ってしまった
代理権を失った後も勝手に代理人として行動するような奴に代理権を与えた本人にも責任がある
↓
代理人が代理権消滅後に代理行為を行った場合、相手方が(代理権が消滅していることに)善意無過失であれば、本人に効果帰属する
表見代理における責任
表見代理が成立する場合、相手方は本人にも無権代理人にも責任追及できる
無権代理と相続
無権代理人が本人を相続した場合
・本人(親):土地を所有
・無権代理人(子):勝手に土地を相手方に売ってしまった
・相手方:土地を買った
↓
・本人(親):死亡
・無権代理人(子):土地を相続
・相手方:土地の引き渡しを無権代理人(子)に要求
↓
・無権代理人(子):追認拒絶権を行使できない
・相手方:土地を入手できる
考え方
自ら土地を売却した無権代理人(子)が、突然手のひらを返して追認拒絶権を行使して土地の引き渡しを拒むのは、信義に反する
例外
・共同相続人(例:無権代理人とは別の次男)がいる場合、無権代理行為は有効とならない(次男はなにも悪いことしてないのに、土地を取られるのはかわいそう)
本人が無権代理人を相続した場合
・本人(子):土地を所有
・無権代理人(親):勝手に土地を相手方に売ってしまった
・相手方:土地を買った
↓
・本人(子):無権代理人の責任を相続
・無権代理人(親):死亡
・相手方:土地の引き渡しを本人(子)に要求
↓
・本人(子):追認拒絶権を行使できる。ただし損害賠償の責任は負う
・相手方:損害賠償の責任だけは追及できる
考え方
本人(子)が自ら無権代理行為をしたわけではないので、本人(子)は追認拒絶権を行使できる
無権代理と相続:まとめ
無権代理人が相続したら、追認拒絶権は行使できない。そんな都合のいい話はない
(ただし兄弟がいれば無権代理行為は有効とならない。都合のいい話あった!)
復代理
復代理における4者
・本人
・代理人
・復代理人
・相手方
復代理人
復代理人は本人の代理人であって、代理人の代理人ではない
↓
復代理人と相手方が契約を締結したら、その効果は、代理人を経由せず、直接本人に帰属する
復代理人が選ばれても、代理人は代理権を失うわけではない
↓
本人からしたら、代理人が代理人・復代理人の2人いる
復代理人を選任できる場合
◇任意代理の場合
原則
・代理人は復代理人を選任できない
(考え方:任意代理は、本人が自分の意思で選ぶものだからである)
例外
・本人の許諾を得たとき、またはやむを得ない事情があるとき
(やむを得ない事情の例:代理人が交通事故にあったとき、本人の許諾を得ず復代理人を選任できる)
◇法定代理の場合
代理人は、いつでも自由に復代理人を選任できる
(考え方:親だからといって、代理人として適任であるとは限らないから)
復代理人を選任した代理人の責任
◇任意代理の場合
復代理人によって生じた損害が、代理人の責によるなら、代理人は本人に債務不履行責任を負う
◇法定代理の場合
原則的に代理人は全責任を負う
やむを得ない場合であれば、過失がある場合のみ本人に責任を負う